TDK株式会社 · 2026年3月期
TDKは、カセットテープの会社なのか。
TDKと聞いて、カセットテープのロゴを思い出す人はまだ多いかもしれません。その記憶は間違っていません。ただ、2026年3月期の売上2兆5,048億円の54.7%は、二次電池などを含むエナジー応用製品です。一方でTDK自身は、現在の経営でも「Ferrite Treeを進化させる」と表現しています。製品の看板は大きく変わっても、材料とプロセスの技術を別の用途へ広げる動きは続いています。
投資判断や銘柄推奨を目的とした記事ではありません。企業が公開した一次資料を、会社の輪郭が見えてくる順番で読み直しています。
TDKと聞いて、まずカセットテープを思い浮かべる人は少なくないはずです。
その記憶は、会社の歴史として間違っていません。
ただ、現在の数字から見ると、TDKはかなり違う姿になっています。
まず、売上は2兆5,048億円
その中で、いちばん大きいのはカセットでも磁気ヘッドでもありません。
売上の54.7%は「エナジー応用製品」
エナジー応用製品だけで、売上の半分を超える
2026年3月期。TDK会社資料の売上構成。
「今のTDKは電池会社」と言いたくなりますが、それだけでも全体像は足りません。
受動部品、センサー、磁気応用も、それぞれ2,000億円超
しかも、その事業の多くは日本の消費者向けに直接売られているわけではありません。
売上の約90%は海外
では、これほど違う事業をどう見るとつながるのでしょうか。
会社自身の資料が、その変化をかなり直接的に描いています。
事業ポートフォリオの起点は1935年
カセットテープは、その長い変化の中で大きな知名度を作った製品でした。
カセットから、積層部品と電池へ応用を広げた
ただし、これは一つの技術だけが直線的に変化したという意味ではありません。
磁気テープ、磁気ヘッド、電池、センサーへ枝が増えた
カセットの会社から、複数の電子部品事業へ
TDKが会社資料で描く事業・技術の応用展開。
この枝分かれを、TDKは現在の経営でも一つの言葉で表現しています。
今も「Ferrite Treeを進化させる」
その「昔の技術が、別の用途で生きる」動きは、いまも続いています。
磁気ヘッドは、AI時代のデータ保存を支えている
さらに面白いのは、薄膜ヘッドで磨いた製造プロセスが、また別の製品へ移っていることです。
HDDの薄膜プロセスを、AIデータセンター向けインダクタへ
ここまでつなぐと、TDKを「カセットテープの会社だったが、いまは電池の会社」とだけ見るのは少しもったいありません。
製品の看板は何度も変わりました。
でも、材料や製造プロセスの技術を新しい用途へ移し、必要に応じてM&Aで枝を増やす動きは残っています。
THE VIEW AFTER THE NUMBERS
数字をつなぐと、こう見えた
数字をつなぐと、TDKは「カセットテープから電池へ転身した会社」というより、材料とプロセスの技術を、その時代の重要な電子機器へ移し続けてきた会社に見えてきます。
2026年3月期の売上は2兆5,048億円。その54.7%をエナジー応用製品が占めます。一方で受動部品、センサー、磁気応用製品も大きく残り、海外売上比率は約90%です。
会社資料には、カセットから積層部品、電池へ応用を広げた流れと、磁気テープ、磁気ヘッド、センサーなどへ事業ポートフォリオを広げた歴史が描かれています。そして現在も「Ferrite Treeを進化させる」と掲げ、HDD薄膜ヘッドのプロセスをAIデータセンター向けインダクタへ展開しています。TDKをつないでいるのは、一つの製品ではなく、技術の置き場所を変え続ける力でした。