TDK株式会社 · 2026年3月期

TDKがHDDヘッドの製造技術を電源部品にも生かす

TDKは、ICT機器、自動車、産業機器をつくる企業に向けて電子部品を供給する会社です。二次電池やコンデンサ、HDDで情報を読み書きする磁気ヘッドなど、機器の中で働く部品を手がけています。

カセットの記憶から、電子部品の枝へ

HDDの薄膜プロセスを、AIデータセンター向けインダクタへ

HDDは情報を保存する装置で、その中のヘッドが磁気ディスクに情報を書き込み、読み取ります。TDKは、この記録・再生素子をウエハという基板の上に薄膜を重ねて製造すると説明しています(専門用語の解説:HDD用ヘッド)。

電源系インダクタは、電源回路や直流電圧を変換するDC-DCコンバータで使う部品です。コイルに磁気エネルギーを蓄え、電流の変化を抑えようとする働きを使います。情報を記録するヘッドと、電源回路で働くインダクタでは、製品の役割が異なります(電源系インダクタ、チョークコイル)。

その二つをつなぐのが、薄膜を使った製造技術です。薄膜タイプのインダクタは、ウエハ上にコイルのパターンを形成してつくります。TDKは、HDDヘッドの薄膜プロセスから派生したインダクタを、AIデータセンター向けの低電圧・大電流の領域に位置づけています(専門用語の解説:インダクタ、決算説明会資料 p.29)。

記録する部品と、電源回路で働く部品

HDD用ヘッド

磁気ディスクの表面に向いたHDDヘッド。ヘッドは情報を書き込み、読み取る。

情報を書き込み、読み取る

磁気ディスクに向き合う部品

つくる技術

ウエハ上に記録・再生素子の薄膜を積層

ヘッドの薄膜プロセス技術をインダクタにも応用

薄膜インダクタ

電源回路に組み込まれたコイルの模式図。インダクタは磁気エネルギーを蓄え、電流の変化を抑えようとする。

電源回路で電流の変化を抑える

電源回路・DC-DCコンバータなど

つくる技術

ウエハ上にコイルのパターンを形成

矢印は製造技術の応用を示します。完成品の転用や、同じ設備・全工程の使用を示すものではありません。製品の形状・寸法は模式的です。

応用されるのは、薄膜を使って部品をつくる技術です。完成したHDDヘッドをインダクタに転用する話ではなく、製造設備や全工程が同じだとも資料は述べていません。異なる機能の部品へ製造の知見を広げることで、TDKはデータセンターの保存と電源という別々の用途に関わっています。

薄膜インダクタへの展開と並んで、HDDヘッド自身もデータ保存の部品として使われ続けています。

磁気ヘッドは、AI時代のデータ保存を支えている

ヘッドとインダクタは、TDKが持つ複数の電子部品事業の一部です。会社全体では、二次電池などを含むエナジー応用製品が売上の中心にあります。

全社売上は2兆5,048億円

売上の54.7%は「エナジー応用製品」

DATA VIEW

エナジー応用製品だけで、売上の半分を超える

2026年3月期。TDK会社資料の売上構成。

売上構成: エナジー応用製品 54.7%, その他 45.3%売上構成
エナジー応用製品54.7%その他45.3%

図の「その他」45.3%は、TDKが開示するエナジー応用製品の54.7%を100%から差し引いた当サイト計算で、エナジー以外の全事業をまとめたものです。会社が別に開示する「その他」セグメントの2.1%とは範囲が異なります(会社概要 p.5)。

エナジーに加え、受動部品、センサー、磁気応用も、それぞれ2,000億円を超える売上を持っています。

受動部品、センサー、磁気応用も、それぞれ2,000億円超

これらは、ICT機器、自動車、産業機器などの中に組み込まれる部品です。TDKの取引と人員は、世界各地に広がっています。

売上の約90%は海外

製造技術を別の部品へ応用する動きは、TDKの長い事業の変化にも表れています。ただし、その歴史には自社開発に加え、他社の事業を取り込むM&Aもあります。

事業ポートフォリオの起点は1935年

カセットテープは、その変化の中でTDKの名を一般消費者に広めた製品でした。会社は、技術の応用展開と事業ポートフォリオの拡張を、それぞれの図で示しています。

カセットから、積層部品と電池へ応用を広げた

積層コンデンサ・積層インダクタへの応用を示す図と、事業が増えた順序を示す図は、異なる側面を描いています。一つの技術だけが直線的に変化し、すべての製品を生んだという意味ではありません。

磁気テープ、磁気ヘッド、電池、センサーへ枝が増えた

DATA VIEW

カセットの会社から、複数の電子部品事業へ

TDKが会社資料で描く事業・技術の応用展開。

1935設立
Cassette記録メディア
Multilayer積層部品
Li-ion二次電池
記事の見取り図

製品は変わっても、技術の枝が増えていく

本文で扱う会社資料を、単純な「カセット → 電池」ではなく、複数方向への展開として整理。

材料・プロセス技術フェライト、積層、薄膜などの技術基盤
  1. 磁気記録磁気テープからHDDヘッドへ
  2. 積層部品コンデンサやインダクタへ
  3. 電池・センサー自社展開とM&Aで事業の枝を追加
  4. AI向け部品薄膜ヘッド工程をインダクタへ展開

今も「Ferrite Treeを進化させる」

技術力、人材、企業文化などを根に持つ樹木のように、将来の事業を育てるという会社の考え方です。これらの基盤は、会社概要 p.5と決算説明会資料 p.35にも示されています。

THE VIEW AFTER THE NUMBERS

数字をつなぐと、こう見えた

TDKでは、記録する部品をつくる技術が、電源回路で働く部品にも使われています。 HDDヘッドと薄膜インダクタは役割が違いますが、会社が説明する薄膜プロセス技術の応用が両者をつないでいます。

カセットから積層部品や電池へ応用を広げた歴史にも、同じく製造技術を別の用途で生かす動きが見えます。同時に、磁気ヘッドやセンサーを含む事業の拡張にはM&Aも関わってきました。TDKの広がりは、技術の応用と事業の獲得を組み合わせて読むと具体的になります。

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投資判断や銘柄推奨を目的とした記事ではありません。企業が公開した一次資料を、会社の輪郭が見えてくる順番で読み直しています。

使用した一次資料

会社概要 / IRミーティング資料 2026

TDK株式会社

使用ページ: p.5 / p.6 / p.7

原文を開く →

2026年3月期 通期決算説明会資料

TDK株式会社 · 2026-04-28

使用ページ: p.9 / p.24 / p.29

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