大日本印刷株式会社 · 2026年3月期

印刷の「版」が、半導体へ。DNPの技術移動。

DNP、大日本印刷。社名にも「印刷」が入っています。実際、2026年3月期で最大の事業は出版、BPO、認証、写真プリントなどを含むスマートコミュニケーションです。ただ、数字をもう一段見ると別の顔が出てきます。エレクトロニクスは売上2,518億円で3部門の中では最小ですが、セグメント営業利益は507億円で最大です。その中には半導体用フォトマスク、OLED用メタルマスク、光学フィルムがあります。なぜ印刷会社がそこにいるのか。答えは、紙にインクを載せる「印刷物」ではなく、印刷用の版をつくる微細加工技術まで含めて「印刷」を見るとつながります。

1兆5,125億円FY2025連結売上高
507億円エレクトロニクス部門の営業利益
2,518億円エレクトロニクス部門の売上高

投資判断や銘柄推奨を目的とした記事ではありません。企業が公開した一次資料を、会社の輪郭が見えてくる順番で読み直しています。

DNP。正式名称は、大日本印刷です。

社名だけを見れば、紙に文字や写真を刷る会社を想像します。

それは今も会社の一部です。

ただ、2026年3月期の数字を並べると、「印刷」の意味が紙よりずっと広いことが見えてきます。

売上高は1兆5,125億円

最大の事業は、名前から想像しやすい領域です。

スマートコミュニケーションは7,503億円

包装や建材、電池部材などは別の大きな柱です。

ライフ&ヘルスケアは5,123億円

3番目が、エレクトロニクスです。

エレクトロニクスは2,518億円

DATA VIEW

売上では、エレクトロニクスが3番目

2026年3月期のセグメント売上高。

売上では、エレクトロニクスが3番目
スマートコミュニケーション7,503億円
ライフ&ヘルスケア5,123億円
エレクトロニクス2,518億円

しかし、利益の並びは逆転します。

売上最小の部門が、営業利益では最大

DATA VIEW

利益の順番は、売上の順番と違う

2026年3月期のセグメント営業利益。

507億円エレクトロニクス
400億円スマートコミュニケーション
372億円ライフ&ヘルスケア

では、印刷会社がなぜ半導体やOLEDの部材をつくっているのでしょうか。

出発点まで戻ります。

1876年、活版印刷所から始まった

紙に刷るためには、まず「版」をつくらなければなりません。

この製版技術が、別の材料へ移ります。

写真製版で、金属に微細な穴をつくる

会社は現在も、そのつながりをはっきり説明しています。

「印刷のはんこ」の技術が、ナノ加工へ

その微細さを、DNPは1970年にわかりやすい形で見せていました。

15mm角に、100年分のカレンダー

印刷から伸びたのは、微細加工だけではありません。

「塗る」「包む」技術も、別市場へ

紙の印刷だけを基準にすると、フォトマスクもOLED部材も電池の袋も遠く見えます。

けれど工程技術を見ると、離れていません。

THE VIEW AFTER THE NUMBERS

数字をつなぐと、こう見えた

2026年3月期のDNPは、売上1兆5,125億円。

最大のスマートコミュニケーションは7,503億円、ライフ&ヘルスケアは5,123億円、エレクトロニクスは2,518億円です。

ところがセグメント営業利益では、売上が最小のエレクトロニクスが507億円で3部門中最大でした。

そのエレクトロニクスは、印刷と無関係に突然加わった事業ではありません。

活版印刷から始まったDNPは、印刷版をつくる写真製版・微細加工をシャドウマスクや半導体用フォトマスクへ伸ばし、現在はOLED用メタルマスクまで扱っています。精密塗工は光学フィルムへ、フィルム加工はバッテリーパウチへ広がりました。

DNPは印刷を捨てて別の会社になったのではありません。

「版をつくる」「塗る」「貼り合わせる」といった印刷の工程技術を、紙の外へ何度も移してきた会社として見ると、半導体までつながる現在の姿が見えてきます。

使用した一次資料

2025年度決算概要及び2026-2028年度中期経営計画 説明資料

大日本印刷株式会社 · 2026-05-13

使用ページ: p.3 / p.5

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1970年大阪万博|磨き続ける微細加工技術

大日本印刷株式会社

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NEXT COMPANY

東レ株式会社 · 2026年3月期

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繊維から、翼と水へ。東レ100年の材料移動。

2026年3月期の東レは売上2兆5,851億円、事業利益1,419億円。会社開示の売上構成比は、繊維41%、機能化成品35%、炭素繊維複合材料12%、水処理・ヘルスケア6%、その他7%です。1926年にレーヨン会社として始まり、1970年には事業実態と社名の乖離を理由に「東洋レーヨン」から「東レ」へ改称。1961年に炭素繊維研究を始め、1970年にPAN系炭素繊維を開発し、後にBoeing 777や787へつながりました。水処理膜も1960年代から研究し、現在は世界70カ国へ供給し、会社は約4億人分の水量に相当すると説明しています。東レは繊維を捨てて別会社になったのではなく、繊維で磨いた材料技術を、より薄く、強く、選択的に機能する材料へ広げ続けた会社です。

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2兆5,851億円FY2025売上収益