HOYA株式会社 · 2026年3月期
HOYAは、メガネの会社なのか。
HOYAと聞くと、メガネレンズの会社という印象が強いかもしれません。その見方は今も間違いではありません。2026年3月期の売上はライフケアが62%を占め、メガネレンズは世界シェア2位です。ただ、残る38%の情報・通信には、AI半導体をつくるマスクブランクスや、データセンターのHDDに使うガラス基板があります。両者をつなぐのは、1941年から続く光学ガラスと、狭くても切り替えにくい市場を選ぶ経営です。
投資判断や銘柄推奨を目的とした記事ではありません。企業が公開した一次資料を、会社の輪郭が見えてくる順番で読み直しています。
HOYAと聞いて、まずメガネレンズを思い浮かべる人は多いはずです。
そのイメージは、今もかなり正しいです。
ただ、会社全体を数字で見ると、メガネだけでは説明できないもう一つの顔が見えてきます。
まず、売上は9,477億円
では、メガネや医療を含むライフケアはどれくらい大きいのでしょうか。
ライフケア62%、情報・通信38%
ライフケアが過半、情報・通信も4割弱
2026年3月期の会社公表構成比。
つまり、「もうメガネとは関係ない会社」と読むのも違います。
メガネレンズは、今も世界シェア2位
では、なぜ同じ会社に半導体やHDDがあるのでしょうか。
答えは、会社の出発点を「メガネ」より一段前まで戻すと見えます。
原点は1941年の「光学ガラス」
その後の沿革を見ると、事業が二方向へ枝分かれしていきます。
メガネの12年後には、半導体用基板へ入っていた
光学ガラスから、二つの方向へ
HOYAの沿革に見える主な分岐。
現在、その情報・通信側でAI需要が追い風になっています。
AI半導体の原版に、HOYAのマスクブランクス
AIの裏側には、計算する半導体だけでなく、大量のデータを保存する装置もあります。
HDDの「ガラス基板」では、100%という数字が出てくる
会社は、この二つへ同時に大型投資を決めています。
EUVとHDDへ、Phase 1だけで約920億円
なぜHOYAは、こうした一見ばらばらな市場を選ぶのでしょうか。
統合報告書では、その選び方自体を強みとして説明しています。
大市場より、「切り替えにくい市場」を選ぶ
そして、その市場選びを支えるのが、素材だけでも量産だけでもない複数の技術の組み合わせです。
参入障壁を「事業の構造」でつくる
ここまでつなぐと、「メガネの会社か、半導体の会社か」という二択ではありません。
メガネも医療も、半導体もHDDも、光学ガラスから始まった技術を、競争の激しい大市場ではなく、深い専門性が必要な場所へ置いてきた結果です。
THE VIEW AFTER THE NUMBERS
数字をつなぐと、こう見えた
数字をつなぐと、HOYAは「メガネの会社」から「半導体の会社」へ変わった企業というより、光学ガラスを起点に、参入障壁の高い市場へ技術を置き続けてきた会社に見えてきます。
2026年3月期の売上は9,477億円。ライフケアが62%で、メガネレンズは世界シェア2位。メガネはいまも大きな柱です。一方、情報・通信は38%を占め、先端EUV向けマスクブランクスやHDD用ガラス基板を持ちます。HOYAはその二つの新工場へPhase 1だけで約920億円を投じる計画です。
重要なのは、製品名より市場の選び方です。要求水準が高く、顧客との技術的なすり合わせが必要で、一度採用されると切り替えにくい市場を選ぶ。 1941年の光学ガラスから続く技術は、メガネにも眼内レンズにも、AI半導体やデータセンターにもつながっていました。